エンジン換装記録


@換装理由
X1/9はすでに30年近く前に設計された、スポーツカーで、量産FF用
1300ccエンジンをほぼそのまま、運転席の後ろに搭載し、手持ちのコ
ンポーネンツで、ミッドシップスポーツカーに仕上げた画期的な、傑作です。
のちのトヨタMR2が真似した(参考?)のはあまりにも有名な話です。
絶妙な重量バランスと、4輪独立サスペンション、おまけに4輪ディスクブ
レーキまで搭載され、当時の量産車にあっては、かなり贅沢にスポーツ志向
を押し出した車であることは間違いありません。実際、1度でも運転したこ
とがある方なら、ハンドリングのシャープさにはびっくりすると思います。
ところが、実はこの車はとても重たいのです。本国仕様でも約900Kg、
US仕様で、エアコン付きともなると1tを超えてしまいます。     
この重さに1300cc(後に1500ccになりましたが・・・。)のシ
ングルカムエンジンではどうにもつらいのです。            
僕はこの車を15年間で3台乗り継ぎ、毎日の通勤(今は片道10Km程度
の距離ですが・・・。)の足として使ってますが、US仕様だと70PSを
下回るアンダーパワーですから、最近の軽自動車より遅いのです。    
この車にもっとパワーがあればと、現X1/9オーナーほぼ全員が思うこと
ではないでしょうか。実際、NAのままハードなチューニングを施した場合
90〜100PS程度まではパワーUPする様ですが、運転フィールもハー
ドなものとなり、いろいろな意味でデリケートな車になってしまいます。 
もともと、1300ccエンジンの場合、86mmのボアに対し55mmの
ストロークと、F1エンジン並の超ショートストロークでピストンスピード
の計算から、許容最高回転数は10000回転以上になるはずのエンジンで
す。従って、高回転でのパワーを追及するのであれば、最高の素材といえる
かもしれません。しかし町乗りで10000回転を使って走るのは、あまり
に現実的ではありません。(きっと、とにかくうるさいことでしょう!!)
そんなこんなでNAのチューニングにはどうしても限界を感じていたところ
ウノのターボエンジンへの換装が可能という情報を得て、この方法を選んだ
わけです。又、やるからには自分でやってみようとも思いました。    
ノーマルのウノターボエンジンはカタログスペックで105PSさらにブー
ストUPで140PSも可能なようです。               

A準備 
当然、エンジンを調達しなければいけませんが、僕はなんとヤフーのオーク
ションで、エンジン+ミッションをゲットしました。部品取りとしてではな
く、エンジン+ミッションだけで売りに出ていたものを購入しました。  
今考えれば、もう少し選択の余地があった様な気もしますが、こういうこと
は勢いが肝心だと、思いきりました。(¥3万+送料でした。)     

 

 

200010月入手のエンジン」

 

 



先方の好意で、エンジン以外の補器類もかなりサービスして頂いたので、こ
れで即載せ換えだと、思っていましたが、いろいろと調べていくと足りない
ものが出てきました。                        
それも代品で済ますことができない、インジェクションのECU(コンピュ
ーターです。)がなかったのです。このエンジンの場合、点火系用のECU
がエンジンルーム内にあり、いかにもこれでOKな感じだったのですが、実
は助手席のダッシュボード内にインジェクションのECUがあるのを知った
ときには時既に遅し、エンジンを提供して頂いたところに問合せましたが、
既に車体を処分したあとでした。                   
ここからが大変でした。エンジン本体があまりに簡単に入手できたのに、E
CUのみは、なかなか見つからず、およそ1ヶ月間インターネット上で捜し
まわりました。新品だと15万、中古で3万位〜とそれなりにお金を出せば
手に入れられるのはわかりましたが、3万のエンジン本体にさらにそれ以上
のお金を出す気になれなくて、悩みました。これは気長に待つしかないかと
あきらめかけていたところで、インターネット内で個人商売を始めたばかり
のNMさんに出会いました。丁度このNMさんは訳ありのウノターボを売り
に出そうとしていたところで、結局この車を引取り、こちらで必要な部分を
外して、残りの車体その他は、知合いのX1/9専門ショップをやっている
KTさんに引き取ってもらうことで話がついたのが去年の暮。年末に待望の
ECUと、これに関わるワイヤーハーネスを入手することができました。 
(この頃のことで新しい友人ができ、たいへん有意義だったと思います。)

 

 

「点火系ECU(Microplex)」  「インジェクションのECU」

 

 

    

ここからは、部品取りのX1/9のエンジンより、マウント等の車体への搭
載時に必要になる部分を交換していきました。             
基本的には同じブロック(もちろん正確には型式等は違います。)なので、
ほとんどのものはボルトオンで取り付けられました。交換が必要なのは次の
部分でした。                            
@エンジンマウント金具(タイミングベルトサイド)          
Aカムホルダー(エンジン上部のマウントロッドを含む)        
Bオルタネーターマウント金具                    
それと、エンジンルームがかなり狭くなるため、オイルクーラーとインター
クーラー(どちらも空冷)は今回は外しての搭載としました。      
いずれもできれば生かしたいものですが、ミッドエンジンとして使用するに
は通風の関係をかなり考えないと無意味なものになってしまうと考えました。
今後の課題として、取り付け方法を検討していきたいと思います。    
インタークーラを使用しないのと、エンジンの実装位置がオリジナルのFF
とはまったく違ってくるため、インマニまでの配管はなるべくコンパクトに
なる様にデザインし、ちょっと複雑な形のパイプ等も必要になりましたが、
エンジンといっしょに頂いてきたオリジナルのウノターボの配管を利用して
ロウ付けや半田付けを駆使し、すべて仕上げました。(ようするに現物合わ
せで配管し、新たに購入した材料はありません。)           
次に、これが最初から非常に気になっていたのと、普通ではなかなか難しい
と思われる問題に、特製のエキゾーストパイプがあります。       
基本的に同寸法のブロック/ヘッドなのですが、ターボ用のエキゾーストマ
ニホールドが使用され、さらにターボユニットが付いているのでそのままで
はマフラーに接続することはできません。               
こればかりは、売ってるものではありませんので採寸してどこかに依頼する
か、自分で作るしかありません。                   
実際にエンジンを載せてみれば、ターボユニットの位置とマフラーの位置が
わかるので採寸も可能かもしれません、3次元に空中を採寸しなければなら
ず、現実には無理でしょう。                     
自作するには、溶接機と溶接の技術が必要になりますが、幸いなことに溶接
機は、以前このX1/9のボディーのレストアをした時に購入した、家庭用
AC100Vの電気溶接機がありました。5年程前に東急ハンズで4万位で
購入したと思いますが、最近はその辺のホームセンターでも2万位から売っ
てますので、この手の工作をされる方なら持っていてもよいと思われる道具
です。あとはもともとのウノターボのエキパイと、同径のステンレスパイプ
をサンダーで輪切りにしながら、部品取り用にあるもう一台のX1/9のエ
ンジンブロックにターボユニットの位置を出した冶具を取りつけて仮の現物
合わせで溶接し、希望の形にしていきました。             
溶接技術は練習あるのみです。お金のある人は半自動溶接機という練習なし
でもそこそこ使えるものもありますが・・・。             

「こんな感じ」


ここまでが実際に載せ換えまでに準備として進めた部分です。      
結局、ここまでの作業におよそ半年かかってしましました。(実作業はすべ
て休日のみ(ほとんどが土日)で、自宅のガレージで行いました。)